猫が人(飼い主)をなめる仕草には、意外な理由が隠れている場合があります。
そこでは猫の賢さや、意外な一面を垣間見ることが出来るかも。
今回は、人の身体の場所ごと、あるいは色々なシチュエーション(場面)ごとに、猫が人をなめる理由や意味をご紹介したいと思います。
当記事は、おもに猫が人(飼い主)の身体をなめる仕草についてご紹介するものです。
猫が自分自身の身体を舐める仕草については、次の記事をご覧ください。
人(飼い主)をなめる意味
■ 相手に「好き。甘えさせてほしい」という気持ちを送っている
猫が誰かをなめるのは基本的に心を許している相手だけで、「好き、甘えさせてほしい」という気持ちを相手に伝えようとしています。
なめる行為は、猫も人も共にリラックスしている状態の時に多く行われます。
人の手をなめる理由
■ 兄弟をお互いになめ合う気持ちになっているから
普通、猫は人の手をなめたりすることはあまりありません。
でも、ときおり一心不乱に飼い主の手をペロペロなめてくることがあります。
これは猫が子猫時代に戻り、兄弟をお互いになめあう気持ちになっている為だといわれています。
このとき猫はとても幸せな気持ちになっているので、たくさん舐めさせてあげるといいでしょう。
手にクリームなどを付けている場合、化粧品に含まれるニオイ、油、甘味に反応してなめている場合もあります。
化粧品には、猫に中毒症状を引き起こす危険な成分が含まれている場合があるため、なめさせないようにしましょう。
人がなでたりブラッシングしてあげると、その手を丁寧になめ返すのはどういう意味?
■お礼の気持ち(受け取った愛情の恩返し)
飼い主さんになでられたりマッサージされた猫が、その手をペロペロとなめ返してくれることはありませんか?
これはなでてくれたお礼の気持ちが込められていて、飼い主さんを「大切な仲間」だと思っている証拠です。
というのも、猫は子猫時代に母猫から身体をなめられたり、兄弟同士で身体なめ合ったりする習慣があって、親密な間柄ではお互いの体をなめ合うからです。
つまり、体をなめ合う(毛づくろい)ことは愛情表現なので、飼い主からなでられたりブラッシングされた猫がそれを愛情表現と受け取り、お礼として飼い主に愛情を返そうとしているのです。
ただ、猫がマッサージあまりの気持ちよさでウトウトしてしまい「寝ぼけて手をなめているだけ」というケースもあるようです。
寝ている人の手足をなめる
■「早く起きて欲しいニャ~」または「ごはんがほしいニャ~」
寝ている人(飼い主)の手や足をペロペロとなめるのは、「早く起きて欲しい」という気持ちの場合があります。
これは、「猫が睡眠中の飼い主の手足を舐めたら飼い主がすぐ起きた」ことがあり、それを覚えていた猫が、早く起きて欲しい時に同じことをするようになります。
このほか、「ごはんが欲しい」という気持ちの場合もあります。
例えば「寝ている飼い主さんの手足をなめたら、起きた飼い主さんがご飯をくれた」ことがあったとします。
猫は賢いので、「寝ている飼い主さんの手足をなめる ⇒ ごはんが出てくる」という図式を学習し、おなかがすくとこのようなことを何度も行う場合があります。
可愛い行動ではありますが、熟睡中にやられるとたまったものではありません。
このような猫の困ったおねだりを防ぐためには、次のような方法で工夫しましょう。
- 睡眠中に猫が舐めてこれないように部屋の環境を整える
- 舌でなめられてもすぐに起きないように、あるいはすぐごはんをあげないよう我慢する
人の髪の毛をなめる
■ 愛する飼い主さんを毛づくろいしている気分
猫が飼い主の髪の毛をペロペロなめてくるのは、飼い主を毛づくろいしてあげているつもりです。
仲良しの猫と猫はお互いに舌でなめ合って、毛づくろい・匂い交換する習性がありますが、それと同じことを飼い主さんにしようとしているのです。
ちなみにこの場合、猫がなめる場所は、基本的に首から上の部分(頭や顔)です。
なぜかというと、首から上の部分は自分でなめられない場所なので、猫同士でなめ合うのです。
髪の毛をなめるのは飼い主さんが大好きな証拠でもあるので、髪の毛をなめられたらお返しに猫の顔や頭をなでてあげるといいでしょう。
ただお風呂上りの時にだけ舐めるのであれば、シャンプーなどの匂いを確かめる為に舐めている可能性もあります。
人の顔(頬、鼻、口など)をなめる
■ 愛する飼い主さんを毛づくろいしている気分
これも髪の毛をなめるのと同じ愛情表現の1つで、猫は愛する飼い主さんを毛づくろいをしているつもりなのです。
ここで猫の愛情を確かめる方法があります。
あなたが猫に顔を近づけたとき、例えばゴロゴロと言いながらあなたの顔をなめてくれるのであれば、猫の兄弟に対する強い仲間意識をあなたに対しても感じているということです。
「猫に顔を近づける」という行為は、「猫を見つめる」行為と同じですので、そのような行為は親しい者同士では「深い愛情表現」、そうでない間柄では「喧嘩を売る行為」だからです。
人の耳たぶ、指、服をなめたり吸ったりする
■ 飼い主さんを母猫だと思って、子猫の気分になっているから(赤ちゃん返り)
猫が飼い主さんの耳たぶ、指、着ている服などを、母猫のお乳を吸うようにペロペロなめたりチュパチュパ吸ったりするのは、幼少期に戻って(赤ちゃん返りして)子猫の気持ちになっているからです。
飼い猫は成猫になっても、子猫のような気持ちになることがあります。
そのとき猫は、母ネコのお乳を吸うのと同じように、飼い主の指や耳たぶ、服をなめたり吸ったりするのです。
ちょうど、人間の赤ちゃんがおしゃぶりを吸うのと同じです。
このような行動は猫を抱っこしたときに多く起こります。
猫は飼い主さんに抱っこをされると、母猫に抱っこをされていた事を思い出すためです。
そのためこの仕草を行うときは、猫が飼い主さんを母猫とみなしているということなので、母猫に対するものと同じくらいの強い愛情を飼い主さんにも持っているといえます。
このほか猫が眠気に襲われている時にもこの動作をやりがちで、「モミモミ(母乳を出やすくさせる動作))」する動作も、これと同時に行う場合が多いです。
こちらは猫が飼い主の耳たぶを、一生懸命なめたり吸ったりしている動画です。
飼い主さんに、思いっきり甘えている様子が見て取れますね。
赤ちゃん返りについて
チュパチュパ、モミモミといった仕草は「赤ちゃん返り」といって、自然と乳離れするよりも早い時期に母猫から離される猫に多いといわれます。
つまり、子猫時代に叶わなかった「お乳をたっぷり飲む」という願望を満たそうとするわけですね。
ちなみに思春期の猫もこれと似た行動をしますが、その場合はチュパチュパと吸うのでなく、カミカミと噛みます。
毛布・服を舐めたり吸う(ウールサッキング)のをやめさせるには?
■ 飼い主さんが母猫と同じくらいの愛情を猫に注ぐ
■ 舐めさせない・吸わせない環境づくり
■ 舐めたり吸ったりしても安全なおもちゃを与える
指や耳たぶの代わりに、柔らかい物(毛布・服・セーターなど)を吸う「ウールサッキング行動」をすることがありますが、なめたり吸ったりしているうちに食べてしまい繊維が胃腸に詰まらせてしまう危険があります。
母猫が与えたはずだった愛情を、飼い主が母ネコになりかわって猫に与える事が、このようなウールサッキング行動をやめさせる方法の1つです。
安全面の対策としては、繊維を飲み込むと危険な物の片づけ、舐めたり吸ったりしても安全なおもちゃを与えることです。
※ 猫は飼い主さんの匂い付きの物、ウール製品を好みます。ちなみにウールは授乳している母猫と似たような香りがするという説があります。
人の脇の下、足の裏などの”臭い”部分をなめる
■ マタタビや猫のフェロモンを嗅いだ時のような気持ちよさを感じるから。
人間には「臭い」としか思えないような脇の下や足の裏などは、猫にとっては大好きな場所の1つです。
このような「臭い」場所の匂いを猫がかぐと、まるでマタタビや猫のフェロモンの匂いを嗅いだ時のような気持ちよさを感じてしまう場合があります。
これには「人間の体臭の中にマタタビに似た匂い成分が含まれているから」という説があります。
飼い主の涙をなめてくれる
■ 飼い主をなぐさめているわけではなく、水を舐めることが好きなだけ。
猫は自分の縄張りの変化にとても敏感です。
そのため飼い主が泣いていたりすると、「いつもと様子がおかしいぞ?」と飼い主に近づいて涙をなめてくれることがあります。
これを美談として「猫がなぐさめてくれた」と思いたいのはヤマヤマですが、残念ながら猫には「なぐさめる」という気持ちはありません。
なぜなら、猫は悲しい時に泣くことがないからです。
つまり「泣く」ことがない猫に、人間の涙が「悲しみ」だと意味が理解できるはずがありません。
ただ、「泣いている飼い主さんの様子が普段と違う」ということは分かります。
猫が飼い主の涙を舐める心理を簡単に説明すると、このようになります。
「飼い主の様子がいつもと違うぞ」⇒「ちょっと確認してみよう」⇒「ほっぺに水が流れている!どんな味だろう?なめてみよう」
猫には水滴をなめる習性があるので、涙をなめるのです。
コップやバスタブの水滴、窓の結露などの水滴を舐めるのが、猫は大好きなんですね。
愛情の大きさによって、人をなめる回数は変わる?
■ 愛情が同じなら、「どれだけたくさん舐めさせてくれるかどうか」で回数が変わる
冒頭でお伝えしたとおり、「基本的に、猫が誰かをなめるのは心を許している相手だけ」なので、そうでない相手はなめようとしません。
でも猫が同程度の愛情を感じる人の中でも、なめる回数が変わってくることがあります。
それは「どれだけたくさんなめさせてくれるかどうか」で決まります。
例えば、お母さんとお婆ちゃんの両者に対して、猫が同じくらいの愛情を持っていたとします。
この場合、動きの少ないお婆ちゃんの方がたくさんなめさせてくれるので、猫はお婆ちゃんの方をなめる回数のほうが多くなるということです。
人をなめている途中に、突然咬んでくるのはなぜ?
■ なめているうちに興奮してきたから
猫は一心不乱になめ続けるあまり、最初は飼い主に甘える気持ちでなめていたのに、感情が高ぶって飼い主を軽く咬むことがあります。
このようなとき、基本的には飼い主に対する敵対心や傷つけようとする気持ちはありません。
ただし強く噛むようであれば、飼い主の手が次第に獲物のように思えてきて咬んでいる可能性があります。
その場合は、猫から静かに遠ざかりましょう。
遊んでいる時に噛みつかれた!その直後、傷口をなめてくる理由は?
■ 噛みつくのは、狩猟本能が高ぶってしまったため。
■ 咬んだ傷口を舐めるのは、捕らえた獲物の味を確認している気分。
猫は狩猟本能が強い動物です。
そのため飼い主さんと遊んでいる時に、狩猟本能が高ぶって飼い主さんの手に噛みつくことがあります。
そしてその直後、咬んだ傷口をペロペロと舐めることがあります。
遊んでいるうちに噛みついてしまうのは、ケンカごっこをしている人間の子供が、「つい闘争心に火がついて相手を本気で攻撃してしまった」というのと似た心理です。
そして傷口をなめるのは、飼い主さんに対して「ごめんなさい」という謝罪の意味でなめるのではなく、捕らえた獲物の味を確認(味見)している気分になっているのです。
猫に噛まれないようにするには、手ではなくおもちゃを使って遊ばせるようにしましょう。
さいごに
当然ながら猫は人間のように話すことができないので、「なめる」といった仕草が重要なコミュニケーションツールの1つです。
普段はクールでツンツンな猫ちゃんの「なめる」仕草に隠れた甘える気持ちを発見できたら、「普段は強気なくせに可愛いやつめ」と思えて猫ちゃんをより一層愛おしくなってしまうかもしれませんね!